ゆるりわんわんお

2019年以降は主ににじさんじのおすすめ配信を記録しています。

Kaede Higuchi Live 2021 "AIM" アーティスト「樋口楓」の第一歩

live2.nicovideo.jp
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2021年2月19日、メジャー1stアルバム「AIM」を引っさげて樋口楓さんのライブが行われました。なお私は現地観戦組です。私は前回の1stライブ「KANA-DERO」はオンラインでみていたんですが、そのときにこんなライブがあるのか…ってめちゃくちゃ衝撃を受けて、そのときから次のライブは絶対に現地観戦しよう…!と思っていて、ご時世がら開催されるかもわからない状況でしたが、対策のもと、無事に開催されて本当によかったです。私自身、音楽体験が邦ロックに偏っているので、非常に樋口さんのロック調楽曲は馴染みあるもので、めちゃくちゃ楽しめました。観客の皆様も声に出したいところでぐっと我慢して、ルールに則った楽しみ方をしていました。せっかくなので備忘録的に感想を書きます。

アーティスト「樋口楓」としての第一歩

前回のライブ「KANA-DERO」がライバーの樋口楓としての駆け抜けた日々を綴ったものだとすると、今回の「AIM」は、アーティスト、表現者としての樋口楓の第一歩といえると思います。
 1stライブの「KANA-DERO」は、にじさんじの黎明期、右も左も変わらないまま突き進んできたときの文脈がすべて乗っかったものとなっており、ある種の伝説でした。ファンメイド曲を中心に構成され、あの「アオハル」「命に嫌われている」「楓色の日々、染まる季節 」の流れは、楓と美兎の関係性でぶん殴る構成となっており、何と表現したらいいのかわからないですが、あの当時でしかできない空気みたいなものはありました。当時、樋口さんが次に「KANA-DERO」を超えられるかがわからない、とこぼしていて、委員長がそれに対して「超えなくてもいいんだよ」と言っていたことがめちゃくちゃ印象に残っていますが、そのぐらい特異なライブでした。
 そして今回、それに対して樋口さんはずっと考え抜いた末の、今の断面での全力を魅せてくれたライブとなりました。「AIM」というアルバム自体が、樋口さんがすべて制作に関わり、樋口さんが表現したいことを詰め込んだアルバムとなっています。お正月の雑談あたりで樋口さんがファンメイド曲は、ファンから見た樋口楓を歌うもので、Lantisでの曲は樋口さん自身が伝えたいことを歌うもの、と言っていて、すごい面白い現象であり、なるほどな、と思いました。そのため前回はファンメイド曲が中心のライブで、リスナーたち、同僚のライバーたちと濃密に過ごした1年の集大成だったとするならば、今回は樋口さん自身が表現者としてリスナーに、みんなに伝えたいものを表現する第一歩になったんじゃないでしょうか。演出面でも、前回同様セトリや演出のプロットは樋口さん自身が考えたということで、自身が表現したいものが詰まっていました。「AIM」のリード曲の「アンサーソング」に込められた思いは、ライブ中やその後の最速感想放送でも聞けるので、ぜひとも聞いてみてください。たぶん多くの人に刺さるものになっています。これを「KANA-DERO」の直後から考えていたっていうんだからすごいよなぁ。ラストが決意の歌「MABLE」で締めたのも最高でした。個人的にアルバムのラストって、次に向かう、明日へ向かう曲が大好きなんですよね。ユニゾンスクエアガーデンの「黄昏インザスパイ」がめちゃくちゃ好き。

歌と物語とライバーと

私自身、これまで音楽というものは音楽としてしか聞いていなかったというか、なんとなく音がいいな、とかフレーズがいいなということを中心に聞いていて、それ故メジャーの邦ロックとかを中心に聞いていた節がありました。それに対して前回の「KANA-DERO」のときに衝撃的だったのは、なるほど、文脈というものが音楽に乗っかるとここまで心に響くものだということでした。普段、我々は生配信中心にしてライバーさんたちの生き様を見てきています。そのためそれを知っているからこそ、歌に込められた思いというものがぐっと深く解釈できるようになりました。
 そして今回のライブでも、生配信やファンとの関わりという、VTuberというものを活かした表現がありました。まず樋口楓といえば、ファンメイド曲ですが、それがメジャーデビューした後の、Lantisレーベルのライブでも演奏されるというのは本当によかった。リアルライブで渇望されていたRed Starをはじめ、Maple Step、響鳴と3曲も入っていました。1stライブに書き下ろされた響鳴がVer.2021になっており、KANA-DEROが好きな自分は特に熱かったです。表現というところでは、ステージ全体を覆う幕に映像を映す技術が使われており、「mimi」や「Q」では樋口さんの位置がその中心になり、映像に溶け込む表現がとても素敵でした。これもバーチャルならでは表現だと思っています。「mimi」は映像がめちゃくちゃきれいでしたし、「Q」はスクリーン全体に歌詞が表示され、その中心で樋口さんが歌っているのはめちゃくちゃかっこよかった。
 個人的に一番好きだったのは、「Victory West!」から「アンサーソング」までの流れでした。「Victory West!」では2020年にじさんじ甲子園をかぶりついてみていた人間にとって、実際の甲子園の映像が使われて、今の樋口監督のコメントも撮りおろしで流れるのはめちゃくちゃエモかった。そしてそのあとに歌われる「Victory West!」は、樋口さんがにじさんじ甲子園のことを思って自分自身で歌詞を書いたことがあり、もう完全ににじさんじ甲子園の主題歌でした。この生配信で紡がれた物語が歌に乗るのが本当に良いです。めちゃくちゃ歌詞が染みるんですよ。「たこ焼きロック」では、二次創作から生まれた三倉ゴゴ先生の「カエデ」ちゃんが登場。そもそも「カエデ」ちゃんをモチーフに作られた歌で、二次創作、ファンアートが盛んな文化だからこそ生まれた曲と表現でした。そして「アンサーソング」は「22歳の樋口楓」に向けた今のVTuberとしてからのメッセージでした。これまであまり「22歳の樋口楓」が語られることはなかったですが、ここではかなり本人の口から22歳の樋口楓と「アンサーソング」に込められた思いが語られました。振り返りで語っていましたが、日頃から樋口さん自身がVTuberにならなかったときの自分を想像して、そこから生み出された「22歳の樋口楓」が語っているからこその実感が伴った思いを受け取ることができました。これをメジャーデビューのアルバムの表題曲にもってきて、ライブでも映像を伴った表現をするというのはめちゃくちゃ「質感」がありました。実際「22歳の樋口楓」が抱えている夢もやりたいこともないという人はかなりの数がいると思っていて、繰り返しになりますが、そういう人たちにも刺さった構成と歌となっていたんじゃないでしょうか。

アーティスト樋口楓は次のステップへ

今回、アニメの主題歌も決まり、アーティストとしての樋口楓は確実に次へ進んでいます。半年ぐらいで終わると思っていたにじさんじがこうやって続いて、本人自身が27歳ぐらいで死ぬんじゃないか、と思っていたところから、今は生き続けたいと本人の口から聞けたのはよかったですし、その樋口楓さんがどういう姿を見せてくれるのかがこれからも楽しみです。ぜひ次のライブも行きたいです。