魔法科高校の劣等生23巻 感想 物語の行く末は。

魔法科高校の劣等生(23) 孤立編 (電撃文庫)

魔法科高校の劣等生(23) 孤立編 (電撃文庫)

ついに物語がどどどーっと動いてきて、ちょー面白いっす。
達也のブラコンっぷりあたりのコメディパートも面白く、ラノベとしてとてもよい完成度をほこっているかなと。
今回は達也という英雄譚、人類同士の争いをなくすための収束点など、文脈としてもかなり動いた感じがあります。

達也という世界を滅ぼせる力

これは英雄譚に連なる物語が問いかけている課題ですよね。
人類にとって共通の敵が倒れたとき、勇者はどうするのか、と。
魔法科の世界では共通の敵、魔王的なものは初めからいないですね。
物語でも明確に述べられていて、風間中佐と佐伯少将の会話で触れられています。
また達也自身も八雲に直接述べられています。
というかそもそも深雪が、達也に対するセーフティー装置として生み出されていますからね。
この辺は「勇者のお師匠様」のレティとウィンの関係と同じようなものでしょうか。
そしてここが争いをなくすための収束点と見事に関わっていることに、なるほど、そうなるのか!と個人的にうなりましたね。

達也の思想と、世界(米ソ)の考えと物語の収束点

達也の最終目標は、魔法の非軍事利用により、魔法師を軍事システムのパーツから解放することです。
そのための方策は根本的な争いの原因、エネルギー問題を解決する、ということでした。
そして今回、米ソは「ディオーネープラン」によるテラフォーミングによって、世界総人口の限界問題について国家を超えた解決を図り、
その手段として魔法師を非軍事利用に用いるというものでした。


これは人類同士の争いをなくすためには、どうしたらよいのか、というところに対する収束点でありますよね。
結局のところ、争いが起きる原因というのは限りあるリソースの奪い合いなわけです。
人が生きるために対して必要な食料、それらを作り出す土地、運用する資源・エネルギー。
今回の場合は、テラフォーミング計画により、新たな土地と資源・エネルギーを得るわけです。
そのための解決手段として、魔法師を非軍事的利用にする、というのは達也の目的とも一見合致するように見えます。
ですが達也のプランの欠点としてあげられているのが、魔法師を経済的利用することによって辛うじて保っていた米ソとその他の小国の軍事バランスが崩れる、ということですね。
作中でも述べられているようにこの開発には非常に長いスパンが必要です。
するとその期間中は、完全にリソースの奪い合いを止められるわけでない、ということですね。
ここが達也が意識していなかった盲点であり、個人的になるほどー、って思いましたね。
この辺が難しいところで、単純に未来の開発を志したところで、目の前にある問題を見ていなければ、結局は頓挫してしまうということですね。


私がよく物語を読んでいると忘れがちになるのが、この辺の当事者感覚なんですよね。
どうしてもメタ視点、あるいは主人公サイド視点で物語を見てしまっているので、主人公たちが未来に向かって最良の結果が選択されるのが当然じゃないか、と思ってしまうのですが、
物語、というよりは現実はそうはいかないんですよね。
大衆というのはたいてい、明日のパンを求めて生きているものです。
未来を見れるのはある程度余裕がある人だけですね。
そして政治家というものはその大衆の意志を反映するものなので、彼らも同じところをみる。
しかし結局のところ明日のパンを求めるための選択肢を選ぶと、滅ぶという運命がわかっている。
されど明日のパンを求めなければ今すぐに死んでしまう可能性すらある。
そのときに直面したときに、どういう答えを出すか、ということですかね。
ほんとはこれウィブレがやっているんですが、いかんせん続刊が…
もうそろそろ3年たつから出してくれても良いのですが…


そしてこのこの時点では世界を滅ぼせる装置としての抑止力として動く覚悟を達也が決める記述がありましたが果たして。

深雪の決断

この巻では達也も覚悟を決めていましたが、深雪も決断しましたねー。
すべては達也のために、という。
今までは特に四葉の意向を気にして、なかなか踏ん切りがつきませんでしたが、今回、四葉からの「誓約」を外す、という大きな決断をしました。
もう孤立する達也を見れていられない、という思いがすべてのマクロ的なしがらみを吹き飛ばした形ですね。
すごいのは、作中で述べられていますが、深雪があんなにも願っていた、達也と結ばれるということを放棄する形になることなのかなと。
16巻では歓喜に打ち震えていましたが、それ以上に、達也のことを願う。
この、パートナーの幸せを願う形、いいですよねー。
はたらく魔王さま!でもそうでしたが、結局のところ決断のきっかけは身近な誰かのため、ということはひとつの答えなんでしょうね。
そこに至るまでの決断をいかに描くかが物語の面白さだと思いますが。


なお個人的に気になるのは、達也のパートナー問題ですかね。
マクロ的な立場を放棄したことにより、少なくとも伴侶的な立場は微妙になりましたからね。
といってもパートナーというところは深雪で揺るがない気がしますが、笑

VS十文字先輩

以前のあとがきで、現時点で作中最強と称されていた十文字先輩との対決がありましたねー。
いやまあVS十文字先輩用に開発したバリオンランスのおかげでわりとあっさりでしたが。
16巻で読んだときはバリオンランスがVS十文字先輩になるのかがよくわからなかったのですが、今回はよくわかりましたね。
通常の分解では次から次へとランダムに障壁が展開されるため、分解の対象が特定できないが、
中性子を防ぐバリアはただ一つであり、それならば達也の分解能力で分解できる、という理屈でしたね。
それをFTA理論?でしたっけ、で中性子線を打ち出す技術を実現したと。
ここに来て達也の、力的なTUEEE感が増してますね。
逆にメンタルが女性に揺さぶられているのが面白いですね、笑

ラスボスと物語の決着と。

最終的な物語の決着はどこに向かうのでしょうかね。
孤立編からエスケープ編へと続き、反撃となるのでしょうか。
立場としては地球にとどまり、世界の抑止力となることなんでしょうかねー。
じゃあそれを一体誰が制御するの?という問題があるわけですが。

そしてあとがきではラスボス、と言われていますが、レイモンドとあとは光宣あたりでしょうかね。
この二人は手を組みそうな気がしますが。
あと周公瑾は退場していない気もするので、このへんがあとどう絡んでくるかですかね。
父親のほうが前座ですっ飛ばされそうな予感があります、笑

魔法科高校の意味、そしてリーナの選択は。

わかっていた展開ではありますが、中盤のレオの達也に対する擁護、そしてラストの集結シーンはこれまでの積み重ねがついに実った!というシーンで目頭が熱くなりましたね。
あくまでも学園モノ、というジャンルである以上、やはりこの展開はすごく必要で、良いものですよね。
学生時代の友人というのは、生活に関わる大きな利害関係の絡まないものなので、こうして孤立していく中でも助けになれるということですよね。
ちなみに最後まで達也のことを慮っていた真由美さんは七草のほうにやはり行ってしまいそうなので、個人的にはとても悲しい…
真由美さん、マクロを乗り越えてくれ!


そしてメンタル的にはポンコツ、というよりは歳相応だけれど、実力は作中最強クラスのリーナがどういう選択をするのか、というのも大きいですよね。
これも達也が積み重ねてきた関係のひとつで、ここがどう転ぶか。
まあリーナは達也サイドに転びそうな感じがしますが、笑
戦記ものではマクロな立場に遵守して、己の心を殺す、ということは少なくありませんが、リーナの場合、そこまでマクロな立場を遵守する理由もない気がしますからね。
ただその場合は世界(米ソ)を敵に回すわけですが…
果たしてリーナは合流して、その立場を築くことができるのでしょうか。

その他

物語の整合性をとるために女装で登場した文弥くんですが、そのときの達也がかっこよすぎて、これアーッ!展開を想像させるに十分な材料なのではないかと思ってしまいました。
今回で少なくとも1vs1の戦闘では、作中最強だった十文字先輩越えましたから、説得力がありすぎますし。
あとその後の深雪の干渉力の強さも半端なかったですねー。
達也と深雪コンビだったらほんとに割とあっさり世界を滅ぼせそう。


あとメイド根性丸出しの水波ちゃん、いいキャラしてますよねー。
達也ですら顔を伺うという…笑
というか、わりと達也は周りの女性に対して弱い気がしますが。


今回、挿絵がすごくよかったです。
深雪の泣き顔、テレ顔、級友の姿など、タイミングもバッチリでしたねー。