少年ラケット5 「チェスをしながら100m走するようなものである」
- 作者: 掛丸翔
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2016/06/08
- メディア: コミック
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と、突っ込まずにはいられない少年ラケット5巻です。
私自身が卓球がわりと好きすぎるので、そういうところが気になったります。
いや、ハンドソウなんて使っている人、ほとんど見たことないですからね!
現在廃盤なので特注で手に入れようと思うと、ウン万円するとかなんとか。
たぶんそこそこいいラケットの2,3倍ぐらいでしょうか…
でも伝え聞くところによると世の中には物好きが一定数いるようですね。
「チェスをしながら100m走するようなものである」
私は卓球の魅力と言ったら、「読み合い」であると答えます。
その「読み合い」の魅力が5巻に詰まっていました。
主人公の伊智朗の試合で、1-7から9-9という推移していった場面はまさに読み合いの真骨頂です。
- 伊智朗がフォアサイドにカーブドライブがやってきたから、次はセオリー通りバックだろうとビリーは読みますが伊智朗は読みを外して再びカーブドライブして2-7。
- ビリーがカーブドライブを予測しているだろうと伊智朗はストレートで3-7。
- ビリーは相手が長いのを待っていると予測して短く返すストップで3-8。
- 伊智朗はビリーが得点したストップを再びやってくるとと見せかけて長いをくるだろうというのを正確にの予測してネットインで4-8
- ビリーは回転(たぶん下)を掛けて相手のミスを誘おうと思うが、伊智朗は回転の変化に強い粒高を使って、うまくかえして5-8
- ビリーが無難にとって5-9
- ここからビリーが焦って凡ミスで7-9
- カーブドライブがチラつくビリーの予測を外して、伊智朗がストップで8-9
- そしてビリーが初めて使うカーブドライブを予測していて、ストレートにぶちぬいて9-9
と、箇条書きにするとこんな感じになります。
伊智朗が「カーブドライブ」というひとつの武器を使うだけで、それだけビリーの予測を外すこと、焦りを誘うことができて1-7からの同点劇を見事に描いています。
一球一球の狙いがきちんと描かれていますし、その読み合いを魅せながらも、簡単に描く部分と大事な場面で大胆にコマを使って魅せてくるテンポの両立が本当に素晴らしいですね。
最後のカーブドライブを読んでいて、見開きを使ってストレートに打つ場面の描写にはしびれました。
読み合いに重きを置き過ぎると、地味な絵になってしまい、マンガの魅力が欠ける。
かといって、そこを描かなければスポーツとしての卓球の魅力が伝えられない。
名作「ピンポン」はどちらかと言うとヒューマンドラマと卓球の爽快感を表現した感じですよね。
というところで、「スポーツとしての卓球の魅力とマンガそのものの面白さ」を卓球への愛とマンガの技量によって非常にうまく表現している作品であると思います。
ちょっと趣旨は違うと思いますがこういった「読み合い」「どういう思考によってスポーツを行っている」か、ということに関して、すでにテニスでは「ベイビーステップ」という名作がありますので、卓球マンガにおける「ベイビーステップ」のようなマンガになってほしいなぁとこれからも期待します!
- 作者: 勝木光
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/17
- メディア: コミック
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