ゆるりわんわんお

2019年以降は主ににじさんじのおすすめ配信を記録しています。

りゅうおうのおしごと!3巻 山刀伐八段と岡崎慎司

ラノベの書評なのに何言っているんだ、コイツ、というタイトルですが、白鳥先生はFC岐阜のサポーターでもあるサッカー好きなので何も問題ありません。
ええ、例えレスターが優勝したころから、このネタをずっと書こうと思って今日までまとまらなかったとしても!
時事ネタ絡めた時に時期外すほど寒いことはないよね!
テーマは、プロで生き残っていくためには、というところになります。

「才能がない」という共通点

二人の共通点は、ずばり「才能がない」と周囲から思われていたし、自覚していたということでしょう。
山刀伐八段は、生石玉将からはっきり言われていますし、岡崎選手は、プロ入団当時FWで8人中8番目の序列でした。
しかし二人はプロに入ってから、猛烈な努力をし続けることで今の地位まで上り詰めています。


今年では岡崎選手は世界四大リーグのひとつであるプレミアリーグの優勝チームのスタメンまで上り詰めました。
日本代表でも通算得点で歴代3位に入っています。
プロとしては既に十分すぎる結果を残していますよね。
これってめちゃくちゃすごいことですよね。


作中において山刀伐八段もタイトルこそありませんが、10人しかいることの出来ないA級リーグ、また名人の研究パートナーまで行っています。
これもプロで十分結果を出していますし、生き残っています。

貪欲に吸収し続ける姿勢

二人が成功を収めている理由こそが、普通の才能がなかったから、とも言えるのではないのでしょうか。
才能がないゆえに、余計なプライドがない。
ゆえに貪欲に吸収し続ける、努力し続ける才能が有るのだと。

「山刀伐は研究パートナーとして日常的に名人の才能に触れている。なのに奴の心は腐るどころかますます強くなっている。あいつには他人の才能を素直に認めて、その強さを自分に取り入れるという度量の広さがある。…」
りゅうおうのおしごと!3巻 P112/193より

と、山刀伐八段は生石玉将から評されています。
彼は才能がないからこそ、貪欲に成長し続けることができたはずです。


また岡崎選手の鈍足バンザイの中で、エスパルス時代にコーチを務めた杉本 龍勇氏の「岡崎の成長過程に対する考察」では努力の才人として4つの要素をあげています。

①課題意識
②取り組む姿勢
③貪欲な目標設定
④体の強さ
この④つの項目は今も感心することであり、成長の理由だけにとどまらず、人としての魅力でもある。彼を一言で称すると「努力の才人」である。この4つの項目に関しては、誰もが参考になる部分である。
鈍足バンザイ! 32%より


このへんって、普通のプロになる才能がある人には逆になかなか出来ないことなのかなと思います。
中途半端、あるいはある程度のカテゴリまで通用する才能がある人は、上記のことを意識しなくても、ある程度通用しちゃうんです。
しかし上のカテゴリでは通用するほどに成長することはできないで、現状維持程度に留まってしまうのかなと。
あるいは余計なプライドが邪魔をして、岡崎選手のように正しい課題意識であったり目標設定ができないのです。

折れない心

岡崎選手については、記述が見つかりませんでしたので、共通点というわけではないかもしれませんが、もう一つ貪欲に努力し続けることで必須なこととして、「折れない心」があることではないかと思います。

悔しいんだな、と俺は思った。そしてこの悔しさこそが、この人の強さなんだろうなと感じていた。
同じプロ棋士たちから『才能がない』と見下され続けた日々を、この人は力に変えてきた。表面上は穏やかに振舞っていても、見下されて傷つかないものなどプロの世界にはいない。『勝ちたい』という気持ちは一日も途絶えることなく、だからこそこの人は、誰よりも強烈な努力を続けられられたんだろう。ただの努力じゃない。強烈な努力を。
りゅうおうのおしごと!3巻 電子版66%より

これは山刀伐八段が1000時間掛けてやった研究成果を、100時間足らずの研究によって主人公の八一が破ったときの八一の感想です。
しかし山刀伐八段はこれでも下を向かずに、むしろ気持ちにおごりがあったとしてまた前を向くことを決意しています。
逆に才能がある人が、それよりも巨大な才能にぶち当たったら、心がポキリと折れてしまうのではないでしょうか。

プロで生きていくための大切な素質

この二人から思うのですが、プロで生きていく、生き残っていくための素質というのは、最低限のプロになれる才能さえあれば、あとは正しい努力をし続けることができるか、ということなのではないかと思います。
具体的な正しい努力というのは先程あげた鈍足バンザイのところに書いてあるあたりなので、ご参照ください。
この二人の場合は、才能がなかったからこそ、逆に正しい努力をし続けることができているんだと私は思います。
中途半端に才能がある人達というのは、どうしてもこの正しい努力とういうことがなかなかできない。
最初は岡崎選手より才能があった、実力があった人は多くいたはずですが、彼は日本では既にトップの選手となっています。


そして才能がある選手がさらに正しい努力をできてしまったときに、そりゃもう化物みたいな人が生まれるんでしょう。
なのでプロとして伸びる人を見つけるときは、この「正しい努力をし続ける」ことのできることが何よりも重要なのではないでしょうか。

少年ラケット5 「チェスをしながら100m走するようなものである」

少年ラケット 5 (少年チャンピオン・コミックス)

少年ラケット 5 (少年チャンピオン・コミックス)

ハンドソウかよ!
と、突っ込まずにはいられない少年ラケット5巻です。
私自身が卓球がわりと好きすぎるので、そういうところが気になったります。
いや、ハンドソウなんて使っている人、ほとんど見たことないですからね!
現在廃盤なので特注で手に入れようと思うと、ウン万円するとかなんとか。
たぶんそこそこいいラケットの2,3倍ぐらいでしょうか…
でも伝え聞くところによると世の中には物好きが一定数いるようですね。

「チェスをしながら100m走するようなものである」

私は卓球の魅力と言ったら、「読み合い」であると答えます。
その「読み合い」の魅力が5巻に詰まっていました。
主人公の伊智朗の試合で、1-7から9-9という推移していった場面はまさに読み合いの真骨頂です。

  • 伊智朗がフォアサイドにカーブドライブがやってきたから、次はセオリー通りバックだろうとビリーは読みますが伊智朗は読みを外して再びカーブドライブして2-7。
  • ビリーがカーブドライブを予測しているだろうと伊智朗はストレートで3-7。
  • ビリーは相手が長いのを待っていると予測して短く返すストップで3-8。
  • 伊智朗はビリーが得点したストップを再びやってくるとと見せかけて長いをくるだろうというのを正確にの予測してネットインで4-8
  • ビリーは回転(たぶん下)を掛けて相手のミスを誘おうと思うが、伊智朗は回転の変化に強い粒高を使って、うまくかえして5-8
  • ビリーが無難にとって5-9
  • ここからビリーが焦って凡ミスで7-9
  • カーブドライブがチラつくビリーの予測を外して、伊智朗がストップで8-9
  • そしてビリーが初めて使うカーブドライブを予測していて、ストレートにぶちぬいて9-9


と、箇条書きにするとこんな感じになります。
伊智朗が「カーブドライブ」というひとつの武器を使うだけで、それだけビリーの予測を外すこと、焦りを誘うことができて1-7からの同点劇を見事に描いています。
一球一球の狙いがきちんと描かれていますし、その読み合いを魅せながらも、簡単に描く部分と大事な場面で大胆にコマを使って魅せてくるテンポの両立が本当に素晴らしいですね。
最後のカーブドライブを読んでいて、見開きを使ってストレートに打つ場面の描写にはしびれました。


読み合いに重きを置き過ぎると、地味な絵になってしまい、マンガの魅力が欠ける。
かといって、そこを描かなければスポーツとしての卓球の魅力が伝えられない。
名作「ピンポン」はどちらかと言うとヒューマンドラマと卓球の爽快感を表現した感じですよね。
というところで、「スポーツとしての卓球の魅力とマンガそのものの面白さ」を卓球への愛とマンガの技量によって非常にうまく表現している作品であると思います。


ちょっと趣旨は違うと思いますがこういった「読み合い」「どういう思考によってスポーツを行っている」か、ということに関して、すでにテニスでは「ベイビーステップ」という名作がありますので、卓球マンガにおける「ベイビーステップ」のようなマンガになってほしいなぁとこれからも期待します!

ベイビーステップ(40) (講談社コミックス)

ベイビーステップ(40) (講談社コミックス)

いずれ進んでくれば、ベイビーステップと少年ラケットの魅力を比較してみたいですね。